腹ぺこでゴダール『アルファヴィル』を観る。α都市、という意味。ゴダール映画の中では比較的明快。しかしこの、パリの街を丸ごと近未来にする度胸というか、厚顔無恥というか、素晴らしい。1時間も観ているとちゃんとSFに馴染んでくる。カッコいいだけの編集もキレキレ。やっぱりこういうのは色が無い方がいい。
アンナ・カリーナが綺麗。正面アップに耐えるどころか、全編これでもいいくらい。
序盤は主人公のイワンが無愛想で「なんだこいつ」と思った。鞄持ちましょうか、に対して嫌悪の顔で鞄を引く。しかし銃が似合う。
非論理的行動をとった者は殺されてしまう。ディストピア。射殺され、水しぶきが上がり、整列した水着の女たちがそれをかき消すように飛び込む。それは良いのか?と突っ込みたくなるような病者だが、その分印象に残る。
やはりこのスピード感。気を付けないと置いていかれる恐るべし編集のテンポ。会話シーンでもわざわざ他のショットを持ってきて差し込む徹底ぶりで、意地でも画面を動かすんだという。ショット内の構図の立体→平面の変かも滑らか。こういう映画を観ると映画を撮りたくなる。ゴダールの映画はその動きをもって衝動を生む。
今日が消費期限のフランスパンを食べる。まだ半分残っている。心なしか酸味がするが大丈夫だろう。
ツイッターのフォロワーとスペースでお喋りをする。映画や音楽、暇についての話。濱口竜介は著書『他なる映画と』の中で、脚本によって自由を制限することについて語っていたが、これは今の私の生活にも言えるかもしれない。休学期間は自由だ。大学のカリキュラムに囚われることが無い。そうすると無限の選択肢が生まれてくる。見せかけの自由。ある程度制限されていた方が、選択は容易になり、物事の判断が付きやすい。狭めすぎると線路上を走る列車のようになってしまうが。
皆と今出川で能を観る。演目は『望月』。何も知らないので出発前にパートナーに教えを乞うが能面以外何も知らないと言われる。
席に座って、グローグーのミニフィグが入っているレゴセットを買うかどうか後輩に相談していたら能が始まった。最初の1時間はスター・ウォーズのオープニングのようで至極退屈だったが、本編が始まると尻上がりに面白くなった。
簡単に言うと仇討で、主人を討った望月と残された主人の家族が一緒の宿に泊まるという話。最終的に望月は殺され、仇討は果たされたのだが、そこまでの演出が凄い。終始打楽器と笛による音が鳴っていて、ポール・トーマス・アンダーソンの映画みたいだった。入場と退場のタイミングが計算されていて、討たれる前に望月が退場し、刀が入るときには笠だけになっているという演出。オビ=ワン・ケノービみたい。この場面は舞台のかなり端の方でやっていて、柱が被っていた。
同行した友人はパチンコのようでドーパミンが出たと言っており、理解できる。焦らしまくって最後にパッと華やかに終わった。
能は元々自然とか霊とかスピリチュアルな題目が多いのだが、今回は単純明快なエンタメ演目だった。華やかで見どころがあり、ちゃんとオチがあったので初心者にもお勧めということ。
皆でインドカレーを食べる。注文を聞き返され、トイレから戻るとまた聞き返された。画像を無理やり拡大したためにガビガビになった絵が壁に飾られていたり、ルーを温めるレンジの音が聞こえたり、後輩の頼んだほうれん草カレーから抹茶の風味がしたりと中々不穏。味は普通。
『シスの復讐』を観ようと思ったものの疲れ切って就寝。