20260705

昼過ぎまで寝ていて生産性が著しく低い。とりあえずガツンとラーメンを食べる。頭からエネルギーが生産される音がする。または土砂降りの雨の音か。

このまま貴重な日曜日を終わらせてしまうのは癪なので、出町座で映画を観る。

カルチケを利用して『PEAK END』を観る。

ブランコに乗りながらカメラでお互いを映す二人。カメラの眼はフィクションの眼。しかしここではそんなルールは通用しない。劇映画でもない。かといってドキュメンタリーでもない。どこまでが本当で、どこまでが嘘か。そんなことはどうでもいい。カメラに映ったものが彼女たちの全てだ。

朝起きて、食パンを食べ、風船に括り付け、宇宙に飛ばす。(いつも私が現像をお願いしている写真屋で)写ルンですを万引きし、高架下で写真を展示する。沖縄で友人と再会したり、祭りを見たり、焚火をしたり。劇的なことはない。

撮るのではなく、映っている。普段我々が映画を撮る時にする断片化とは違うベクトルのアプローチを踏んでいる。

終盤。新幹線の窓に映る景色を二人が挟んで会話している。ゴダールの『中国女』の終盤を思い出す。

Vlog的だと言っている人もいて、しかし真にそうであれば、YouTubeのVlogを映画館で上映したところで何らかの印象を持つはずだ。この映画はそうではない。登場人物に共感できなくてもいいし、好きになれなくても彼女らは彼女らとして存在している。それはこの世界も同じだろう。

時折挟まれる(ちゃんとした、と言えばいいのか)映画のようなショットが、我々を鑑賞者として定義付ける。

上映時間にしては少し長く感じるが、濱口作品におけるワークショップシーケンスのような没入感を感じる。

この映画をジョナス・メカスが観たら何と言うだろう。日記映画をはみ出た日記映画として、この映画はやるべきことをやっていた。

続け様に濱口竜介監督作群『永遠に君を愛す』『天国はまだ遠い』『Walden』を観た。

まずは『永遠に君を愛す』。現在の濱口映画の雰囲気は鳴りを潜めてはいるものの、運動に関しての並々ならぬ執念は今以上に感じ取れる。エロティックな口付けから始まり、二人のカップルは秘密を抱えたまま結婚式へ。貧乏なヌードモデルとセックスしたことを言えずにいる花嫁と、それを知っていながら言えずにいる花婿。それぞれの正しさを喜劇調に描く手腕。ドタバタコメディと言える。

電車のナイスアクト。浮気相手の哀愁をかき消すような緑コートの若い女が、この劇を軽くしている。

ビルを出て階段を下る男を斜めに追うカメラが綺麗。

花婿役の男がダサすぎるというか、いくらなんでもピンクのポロシャツはねえだろうと。平成の小物感。この男は優しいが徹底的に空気が読めていないし、自分を支えることで精一杯なので、結婚後も何でもかんでも抱え込んでしまいいつしか爆発してしまうのだろうなと要らぬ心配をする。花嫁も花嫁で自分勝手で、その父親もコロコロ態度を変える。その空虚さ。叩けば良い音がする。『ハッピーアワー』の鵜飼のような人物とは違うのだが、この映画全体がそういう空虚感とナンセンスの膜を張っている。

ドアを使って奥と手前を切断した長回しが上手い。

若き日の今泉力哉がエキストラとして出ていたみたい。

『天国はまだ遠い』。雲の空撮と共に流れるはポップなリズムの劇伴。『寝ても覚めても』の劇伴がtofubeatsだったことを思い出して、どういう経緯でこうなっちゃったんだろうと一瞬よぎる。

殺人事件に巻き込まれた姉についてのドキュメンタリーを撮るために話を持ち掛ける女。姉の同級生だった男はアダルトビデオにモザイクを貼る仕事をしており、彼にはずっと彼女の幽霊があの頃のまま憑りついている。『永遠に君を愛す』より運動の快楽は少なく、活劇的と言うより没入感を高くしたような作りになっている。幽霊を信じない妹は男にカメラを向ける。姉は男に憑りついて、思い出話をする。カメラ=スクリーン。ずれの抱擁。

『Walden』は揺れる水面に映る木の枝をフィックスで見つめる短編。芝田日菜『水面に映る家』を彷彿とさせる。

映画館に数時間籠って数本の映画を観て帰るという体験は、何にも代えがたい。幾つかの本を跨いで読んでいるような感覚になる。映画館を出るまでは外界と遮断される。自分の頭の中のイメージが、誰かに抜き取られることなく混ざり合う。最早それはAとBそれぞれの映画体験ではなく「AとB」単体の体験なのだ。

私は評論家ではないので、それぞれのコンテンツを評価するということはしない。自分の映画やその他の制作物に対してのインプットとして、それらを淡々と吸収する。その映画がどうであるか、ということはあまり重要視しないのだろうと思った。

パートナーがカレーを作っているというので向かうが、彼女の鍋に入っていたのは人参と玉ねぎのみ。その代わり、出来上がったカレーは絶品だった。当の本人は一口食べてすぐ寝ていた。

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